きちんと座れず、だらっとしているのはなぜ?
2015年4月21日 [ADHD 対応]

「姿勢が悪い」「やる気が無い」といわれませんか?
ADHDのお子さんの中には、椅子にきちんと座らずにだらっと寄りかかるように座っていたり、整列が出来ずに体をゆらゆらさせたり座り込んだりする方が多いようです。
そのため先生や周囲の人たちから「だらしがない」「やる気がない」「注意しても直す気が無いのは、親のしつけが悪いのでは?」などと言われてしまいがちですが、このブログを読んでくださっている方なら「やる気」や「しつけ」の問題ではないということをおわかりでしょう。
原因は「平衡感覚」なんです!
では何が原因なのでしょうか?実は平衡感覚や筋力が不足しているためなのです。
私たちは日常、無意識に平衡感覚を使って姿勢を保っています。体が傾いていると感じたら自然に体を起こしますが、その時に平衡感覚と、体を起こすための筋力を使います。
ADHDのお子さんの場合、この平衡感覚の発達が未熟なために姿勢を保つことが出来ず、だらっと椅子にもたれかかるような姿勢や、床に寝そべるなどにつながってしまうのです。
また平衡感覚が不充分なため、はっきりとした刺激を求めて体をゆらゆらと動かしたり、歩き回ったりと「多動」と言われる行動につながっているとも考えられています。
平衡感覚が充分に発達していないうえに筋力が弱ければ、なおさら姿勢を保つことは難しくなってしまいます。小さいお子さんの場合は、体を動かして遊ぶことで自然に筋力がつきますから、外で走ったり、ジャングルジムを登ったりとしっかりと遊ばせましょう。筋肉の材料となるタンパク質をしっかりと摂ることも大切です(タンパク質については「ADHDに対抗するタンパク質のチカラ!」のページをご覧くださいhttp://adhd.jpn.com/adhd-e/2014_009/)。
また疲れやすいお子さんが多いのもADHDの方の特徴のひとつです。「疲れた」と感じるとき、体力面での疲れと精神的な疲れがありますが、ADHDのお子さんの場合は筋力が弱くて肉体的に疲れやすいうえに、一度に複数のことを考えるのが苦手などの理由から集団の中で皆と一緒に過ごすだけで頭の中がいっぱいになって、精神的にも疲れ果ててしまいます。
そんな時に「姿勢を正しく!」と言われても、ちゃんと出来ないのは当然ですよね。
*参考:木村順著『育てにくい子にはわけがある』(大月書店)
*「ADHDに対抗するタンパク質のチカラ!」
体を動かして平衡感覚を養いましょう
では平衡感覚を養うにはどのようにしたらよいのでしょうか?まずは体を動かして遊ぶことです。
なかでもおすすめなのは、トランポリンで大人がトランポリンの外で子供の両手を持って支えたうえで出来るだけ高く飛ぶことを繰り返す(出来れば飛び上った時の場所に降りるようにする)ことや、滑り台やそり遊び、小さいお子さんを大人が抱っこした状態でのブランコ遊び、回転いすに座ってグルグル回るなどです。
どれも体が動く感覚に慣れることが出来ますが、ケガをしないように十分に注意をしながら行いましょう。
*参考:木村順監修『発達障害の子の感覚遊び運動遊び』(講談社)
眼のトレーニングも有用です
また平衡感覚は視覚と深く関連しています。ビデオカメラを持って走りながら撮影すると、その画像は大きくブレていて、見ていると目が回ってしまいそうになります(最近のビデオカメラは手ぶれ補正機能がありますので、さほどひどくないですが)。しかし走りながら周囲を見回しても、撮影した画像のような大きなブレは感じないですよね?これは眼球が細かく動いてブレを補正し、平衡感覚を保てるようにしてくれているからなのです。
ところがADHDのお子さんでは、この眼球の細かい運動がうまく出来ず、平衡感覚に狂いが生じているケースも多いようです。眼球の動きがうまく出来ないため、大人から見ると「話しかけても目が合わない」と感じることがあります。
また目の動きが悪いため、教科書や黒板の文字のどこを読んでいたかがわからなくなり、飛ばして読んだり同じところを何度も読んだりと、勉強にも悪影響を及ぼします。
手に持ったボールを動かして目で追ってもらう、両手の人差し指を見ながら目を寄せたり離したりをする、転がしたビー玉を目で追ってキャッチするなどのトレーニングで目の動きをスムーズにすることが、姿勢や視線、勉強の改善に役立ちます。
*参考:ディスレクシア支援協会HP
お子さんの姿勢が悪いことよりも、生きていくうえで必要な平衡感覚や眼球運動がきちんと機能していないことが問題です。怪我や事故などにつながりかねません。
もちろん社会生活を送るうえでは、きちんとした姿勢を取れた方が良いですし、勉強もできた方が良いですよね。
トレーニングを重ねることによって、姿勢や成績がよくなれば自信につながりますし、きちんと人と目を合わせられるようになると、周囲の人たちとの人間関係も良くなるでしょう。
頑張ってトレーニングを続けてみましょう。
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