なぜキレる?なぜ不安になる?ADHDに悪影響を及ぼす食べ物とは?<その1>
2014年12月5日 [ADHDと栄養]

栄養をプラスするだけではなく、マイナスすることも意識しましょう!
これまでも書いてきたとおりADHD症状は食事を工夫することで軽減できる可能性があります。
食事の工夫というと「野菜を沢山摂る方法は?」「お魚を食べてもらうには?」と、「食べさせること」を考えがちです。でも様々な資料を読んでいると、栄養をプラスするだけではなく、悪影響を及ぼす食べ物をマイナスしてみる、という方法も試してみる価値があるようです。
最近、よく耳にするトランス脂肪酸とは?
トランス脂肪酸の定義は「トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸」というものですが、この説明では良くわかりませんね。
トランス脂肪酸は食品に含まれる油(油脂)の一種で、大きくふたつの種類に分けられます。
1.牛肉や乳製品などの食品にもともと含まれている天然型のもの。
2.液状の植物油に人為的に水素を加えて固形化したマーガリンや、洋菓子の原料として広く使われているショートニングなど。
摂り過ぎが問題となるのは2番の人為的に作られたトランス脂肪酸です。これらは様々な食品に含まれていますし、お子さんが好むクッキーやケーキ、市販の揚げ物などに広く使われていますから、完全に避けることは難しいものです。しかし摂り過ぎると悪玉コレステロールを増やして、心臓病にかかる可能性を高めるとして、欧米で問題視をされています。
日本人は比較的、トランス脂肪酸を食べている量が少ないとされていますが、あくまで平均すると少ないというだけで洋菓子や揚げ物を好む若者では平均を上回っていると考えられており、やはり減らすように心がけた方が良いでしょう。
かつては「バターは動物性脂肪だから健康に良くない。植物油で作ったマーガリンの方が良い」といわれたこともありましたが、現在ではバターよりもマーガリンの方が健康に悪影響を与えると考えられるようになっています。戸惑ってしまいますが、やはり新しい情報を取り入れていくことも必要です。
食品に含まれるトランス脂肪酸の量については、主なものが農林水産省のホームページに載っているので、一度ご覧になってはいかがでしょうか?
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content.html
*参考:農林水産省ホームページ「すぐにわかるトランス脂肪酸」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/

ADHDとトランス脂肪酸の関係は?
トランス脂肪酸を多く摂ると心臓病にかかる可能性が高まることは比較的知られています。では脳の働きやADHD症状とはどのような関係があるのでしょうか?残念ながら、それについてはまだ科学的にはっきりと実証されてはいません。
しかし何人もの研究者たちが、トランス脂肪酸は脳機能に悪影響を与え、ADHD症状を悪化させている可能性があると発表をしています。
脳にとって「良い油」「悪い油」とは?
脳で情報伝達などを行なっている一千億個以上もの神経細胞の、ひとつひとつの細胞の膜部分には脂肪がたくさん含まれています。そしてこの細胞膜が良い状態に保たれていることが、記憶力、集中力、精神安定などにはとても大切です。
良い油が多く含まれている細胞膜は柔軟性が高くて良く働きますが、悪い油を多く含んでいると思うように働いてくれず、様々な問題につながると考えられています。
脳にとって「良い油」とは魚に含まれるオメガ3脂肪酸と呼ばれる油(DHA、EPAなど)、体内でDHAやEPAに変わる亜麻仁(アマニ)油、オレイン酸を多く含むオリーブ油やナッツに含まれる油、大豆や卵黄に含まれているレシチンなどです。それに対してトランス脂肪酸はそれらの良い油が細胞膜に入るのを邪魔するとされ、脳機能に悪影響を与えるとされています。

油は減らした方がいいの?
普段お料理によく使うサラダ油は、リノール酸という成分を多く含んでいます。これは身体や脳にとって必要なものですが、摂り過ぎると免疫力を低下させる原因のひとつになりますから、注意しましょう。
とはいえ、育ちざかりのお子さんには油は必要な食品です。脳だけではなく全身の細胞膜の材料となり、また活動するためのエネルギー源にもなります。むやみと食べないようにするのではなく、質とバランスに気を付けましょう。
魚(特に青魚)、ナッツ、大豆、卵などをしっかりと食べ、お料理にはできるだけオリーブオイルを使い、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンを避け(どうしても使うときはパッケージの表示を見て出来るだけトランス脂肪酸の含有量が少ないものを選びましょう)、お菓子などは原材料表示を読んでショートニング・加工油脂などと書かれているものは、食べる量や回数を減らすようにしましょう。
良い油を摂り悪影響を与える油を減らすと、脳の神経細胞の働きが良くなり、気持ちをコントロールするセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質がしっかりと作られるようになります。そうすると「キレる」といった衝動的な行動が軽減するとされています。

コーヒーやコーラは控えめに!
仕事などが忙しい時、一杯のコーヒーでほっと一息をつく。大人なら覚えのある行動ですね。コーヒーの香りにはリラックス効果があり、含まれるカフェインには覚せい作用があるため頭がシャキッとするのです。
カフェインは眠気や倦怠感を解消するために医薬品にも使われています。 カフェインが眠気や倦怠感を解消するのは、脳内で眠気や落ち着きを生み出すアデノシンという神経伝達物質の働きを妨害するためです。
頭がシャキッとするならADHDのお子さんにも良い働きをするのでは?と思う方もいらっしゃることでしょう。
実際にADHD症状を持つ大人では、適量のコーヒーを飲むと作業効率が上がるという方も少なからずいらっしゃるようです。しかし飲む量が多すぎると、健康な大人でも精神的に不安を感じてしまうことが知られています。
一般的にお子さんはカフェインに対する感受性が高く、大人よりも大きく影響を受けてしまいますので、お子さんの摂り過ぎには注意をしましょう。
またカフェインの摂り過ぎは脳の血流量を低下させることが知られています。血液は細胞へ栄養や酸素を届ける働きをしていますので、それが減っては十分な働きを期待できません。
もし、お子さんがコーヒーを飲みたがるときは豆乳をたっぷり加えてはいかがでしょうか?またコーラにもカフェインが含まれていますので、飲み過ぎないように注意が必要です。
*参考:ジーン・カーパー著・丸元淑生訳「奇跡の脳をつくる食事とサプリメント」(角川春樹事務所)

ケーキもコーラも禁止はしないで少量を!
トランス脂肪酸を使ったクッキーに、カフェインを含むコーラ。どちらも大好き!というお子さんも多いと思います。もちろん食べない方が良いのですが、お友達のお家でいただく時や、イベント時にまで我慢させてはストレスとなってしまいます。
トランス脂肪酸を含まない手作りおやつが安心ですが、現実的には毎日おやつまで手作りできる時間が無い方も多いでしょう。でも、おいしいおやつはお子さんにとっては大きな楽しみのひとつです。せめて原材料表示をきちんとみて、出来るだけショートニング・加工油脂を含む物を減らすように心がけてください。
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