生まれつきの問題があっても栄養で軽減できる
2014年11月14日 [ADHDと栄養]

ADHDは生まれつきだから、どうしようもないの?
かつてADHDは生まれ持った特性によると考えられていましたが、現在では生まれつきの機能的な問題に、後天的な環境要因が加わって発症すると考えられています。
生まれつきの問題として脳機能の一部の活動が少ない、脳内での神経伝達物質を作る力が弱い、神経伝達物質を受け渡しする部位の感度が低い、脳内の血流不足などがあるとされています。
環境要因としては、知らず知らずのうちに摂取している水銀やダイオキシンなどの有害ミネラルの蓄積、運動不足、食事の栄養バランスの問題などが挙げられます。最近、ADHDのお子さんが増え続けていると言われていますが、これらの環境要因の変化が大きな理由のようです。
生まれつきの問題を解決するのは大変難しいことですが、必要な栄養素を一般的な量よりも多く摂ることで症状を和らげることは可能です。ほかのお子さんよりも弱い部分を、積極な栄養補給によって強化してゆけば良いのです。
ADHDの原因は食事?
現在の私たちの食事は、糖質を多く摂り、精製度の高い穀物(白米、小麦粉など)を食べ、加工食品も多用しているというのが一般的な姿ではないでしょうか。
このような食事は、エネルギー量(カロリー)は十分でも、ビタミンやミネラルが不足しがちで、糖質が過剰、タンパク質も不足しがちです。そしてそのような食事はADHD症状を悪化させることが分かっています。
情報伝達や感情のコントロールに関わっている脳の神経細胞をしっかりと活動させるには十分なタンパク質や、ビタミン・ミネラルが必要だからです。
おにぎりだけ、菓子パンだけ、麺類だけといった炭水化物に偏った食事はADHD症状を悪化させるため極力避けて、肉・魚・大豆のいずれか(=タンパク源)と、野菜や海藻(=ビタミン・ミネラル源)も摂るようにしましょう。
タンパク源としては、アタマの健康維持に役立つDHAやEPAなどを含む魚を特におすすめします。
食事を改善するだけでADHD症状が徐々に改善してくる可能性があるのです。
毎食きちんと食事の準備をするのは大変なときもありますから、ヒジキの煮物やキンピラなどの常備菜を何品か作り置きをするなどの工夫も必要でしょう。
また食事の内容だけではなく、朝食抜きの習慣もADHD症状を悪化させると言われています。朝食をきちんと摂らないと前日の夕食時から当日の昼食時までの空腹時間(=低血糖の状態)が長くなり過ぎ、そこで糖質を多く含む炭水化物や甘い物を食べると血糖値が急上昇します。この低血糖から高血糖へ、そしてまた急激に低血糖へという血糖値の乱高下は、精神状態をも乱高下させてしまいます。
夜更かしや、夜遅い時間の食事は、翌朝起きられない、朝に食欲がないといったことの原因となりますので、規則正しい生活リズムも大切です。
腸内環境も大切です
ADHDのお子さんでは悪玉菌が多く善玉菌が少ないという腸内環境が悪い状態で、下痢や便秘、腹痛といった腸のトラブルを抱えているケースが多いのです。せっかく栄養に配慮した食事を摂っても、それを吸収する腸の状態が悪ければ、きちんと吸収されずに排泄されてしまいます。
最近の研究で腸と脳は密接な関係にありお互いに干渉しあっていること、腸は免疫力の維持に今まで考えられていた以上に深くかかわっていることなどが解ってきました。腸を健康に保つことは、心身共に健康でいるために非常に重要なことなのです。
腸を良い状態を保つためにも、食物繊維を含む野菜や、乳酸菌を含むヨーグルトもしっかり食べましょう。
食物アレルギーが関係している可能性も・・・
ADHDのお子さんはアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などアレルギー疾患を併発している場合が多いそうです。そういったお子さんは遅延性食物アレルギーでもある可能性があります。
食物アレルギーというと、発疹が出来てかゆくなって・・・という症状を思い浮かべますが、ほかに遅延性アレルギーといって食べてからしばらく(おおむね6~24時間後)してから、疲労感が出たりイライラが生じたりするものもあります。これは気づきにくいので見逃されがちですが、○○を食べると翌日調子が悪い、ということがないかも気をつけてみる必要があります。
中でも小麦に含まれる「グルテン」や乳製品に含まれている「カゼイン」というタンパク質は、遅延性アレルギーの原因となる確率が高いものです。ADHDのお子さんの一部はタンパク質を分解する酵素の働きが弱く、その分解しきれなかった物質が血液を介して脳に入って興奮状態にしたり、反対にボーっとさせたりという症状を引き起こしている場合があると考えられています。
小麦と乳製品を食べない生活に切り換えたところ、劇的にADHDの症状が改善したという例は、少なくはないようです。
ミネラルには有害なものも・・・
ADHDの原因のひとつに有害ミネラルがあります。積極的に摂りたいカルシウムやマグネシウムをはじめとする有用なミネラルもありますが、古い歯の詰めもの(アマルガム)に含まれている水銀などの有害ミネラルも存在します。ほかにも古い水道管に使われている鉛、たばこの煙に含まれているカドミウム、鍋や缶詰に使われているアルミニウムなどにも注意が必要です。
一時「デトックス」という言葉がはやりましたが、まさにこれが体内に蓄積している有害ミネラルを排泄して健康になろう、という考え方です。食物繊維には有害ミネラルを絡めとって排泄させる働きがありますので、野菜や海藻をしっかりと摂りましょう。特に有害ミネラルを挟み込んで排泄させるキレート作用を持つイオウを含んでいるニンニクやタマネギ、肝臓での解毒作用高めるブロッコリー、キャベツ、大根などがお勧めです。
出来ることから始めましょう
確かにADHDは生まれつきの要因が大きいものですが、食事や運動、生活環境の改善などによって、その症状を軽減することは可能です。
そのことがあまり知られておらず、すぐに薬による治療が行われがちですが、まずは日常の生活を、出来ることからひとつずつ見直してみることも必要です。
運動をして脳を含む全身の血流を良くする、規則正しい生活を送って朝食は毎日しっかり摂る、野菜をしっかりと食べる、など手軽に始められることがあります。
どれも即効性があるものではありませんが、ADHDの改善に限らず心身の健康のために良いことばかりです。家族みんなで、すぐに出来ることから初めてみませんか?
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