脳の栄養不足は気づきにくい
2014年11月12日 [ADHDと栄養]

治療は薬で、が日本の常識
日本では、なんらかの不調を感じてお医者さんのもとへ行くとほとんどの場合、症状から判断して病名を与え、その病名に対応する薬を処方するという診療方法が行われます。その症状を生み出している原因がたとえ栄養不足であっても、そこに気付き指導までしてくれる医師はごく少数です。
なぜならお医者さんになるための勉強の中に栄養に関する内容はほとんど含まれておらず、糖尿病や高血圧など食事との関連がはっきりとしている病気を除いては、症状と栄養の過不足を関連付けて考えるという習慣がないからです。
アメリカではお医者さんと栄養士、薬剤師など様々な専門家が対等の立場でタッグを組んで治療をするチーム医療と呼ばれる方法が一般的です。そのため栄養面に問題がある場合は栄養指導があり、薬による治療と栄養改善を同時並行で行うなど、ひとりひとりに合わせた治療が行われています。
知らない人が多い 脳の健康と栄養との関係
栄養バランスの良い食事、と聞くと多くの方が適切な体重を維持するためや、病気や身体の不調を防ぐためのもの、というイメージを持つと思います。
脳に与える栄養の力については、現在の日本では自分から調べない限りなかなか情報が得られません。
一般の方々の知識としては、脳に必要な栄養素はブドウ糖だからアタマが疲れると甘い物を食べたくなる、青魚を沢山食べるとアタマに良い、といったところでしょうか。
雑誌などをみても、ダイエットをしたい時の食事、高血圧の方や高血糖の方の食事についての記事は目にすることも多いですが、脳の健康維持や精神安定のための栄養についての情報はまだまだ少ないようです。
身体の調子だけではなく、脳の調子も栄養によって大きく左右されています。脳細胞ひとつひとつだって、摂った食事に含まれる栄養素で作られているのですから、当たり前ですよね。お友達に「最近、太ってきて・・・」とか「血圧が高いの」と言えば、「食事に気を付けている?」という答えが返ってくることはあるでしょうけれど、「最近、気分が落ち込みがちで・・・」と言った場合、多くは「何かあったの?」「忙しすぎるんじゃない?」など環境面に関する話題になるのではないでしょうか。
もちろん脳のコンディションは環境の影響を大きく受けますが、栄養の問題も忘れてはならない大切な事です。
ブドウ糖を摂っても脳は栄養不足になる?
脳のエネルギー源はブドウ糖、ということは比較的良く知られていると思います。ブドウ糖はエネルギーにはなりますが、脳の細胞がブドウ糖で出来ているわけではありません。脳の細胞は身体の細胞と同じくタンパク質や脂質で出来ており、細胞の新陳代謝のためにはビタミンやミネラルも必要です。どんなに燃料(エネルギー)が充分にあっても、自動車の部品(細胞)がぼろぼろでは、車はスムーズに走ってはくれないのです。
日本人は白いお米が大好きで、麺好き・パン好きも多く、ブドウ糖の原料となる炭水化物は充分に摂っている方が多いのですが、タンパク質は不足しがちです。菓子パンとコーヒー、麺類だけ、おにぎりだけという食事ではタンパク質だけではなく、ビタミンやミネラルも不足してしまいます。
まずは朝食から!
朝食をしっかり摂りましょう、とよくいわれますが、本当に朝食は必要なのでしょうか?複数の調査によって朝食の有用性が示されています。
全国の小・中学生を対象とした調査では、いつも朝食を摂っているグループの国語や数学の成績(問題の正答率は)、全く摂っていないグループと比較すると1.2~1.5倍良く、朝食を食べる頻度と成績が比例していました。(*1)
また別の調査では朝食を食べる頻度が高い中学生は、そうでない生徒と比べて学習意欲が高く(宿題をきちんとやる、家族に言われなくても自分から勉強をする)、学習習慣があるという結果が出ています。
この調査では朝食を摂る頻度が低い生徒は、午前中の授業での態度が消極的で(ねむい、ノートをとるのが面倒、気が散って集中できない、勉強をする気が起こらないことが多いなど)、体調にも問題が多い(肌があれやすい、下痢しやすい、めまいや立ちくらみがあるなど)ことが解りました。(*2)
他の調査でも朝食を摂る頻度が低い子供は、そうでない子供と比べて感情や心理面で明らかな違いが見られ、うつの確率が2倍、不安の確率が4倍も高いという結果でした。多動症状が見られる割合が30%も高かったのをはじめ、さまざまな精神面、社会生活面でのトラブルを起こす確率が高かったそうです。
さらにほとんど朝食を摂っていなかった子供が頻繁に食べるようになると、学業成績が向上する傾向が確認されただけでなく、うつ、不安、多動などのトラブルも少なくなったそうです。
朝食で脳のエネルギー源であるブドウ糖が補給され、さらに気分を爽快にする働きがあるβ-エンドルフィンという神経伝達物質がブドウ糖を原料として作られるためと考えられています。
β-エンドルフィンは定期的に朝食を摂っていると出やすく、間食が多いと出にくくなるものです。単にブドウ糖を補給すれば良い訳ではなく、睡眠時間という食べない時間をはさんで補給することで、分泌されるようになるのです。
規則正しい生活で睡眠をしっかりととって、朝は早めに起きて朝食を摂る。これだけでも精神安定や成績向上が期待できるのです。
*1:国立教育政策研究所 「平成21年度全国学力・学習状況調査」
*2:朝ごはん実行委員会 平成12年12月「中学3年生の朝食と学習意欲調査」
脳の栄養不足を疑いましょう
やる気が出ない、気分が落ち込むといった症状は、精神的な問題と考えられ、お子さんの場合はまずは親御さんがじっくりと話を聞く、学校の先生や専門家に相談するといった対応をするでしょう。そして重症化したときに受診をして、冒頭のような投薬治療が始まるというのが一般的だと思います。
その流れの中で、脳の栄養バランスが問題かもしれない、と気づいて食事の内容を見直す、朝食をしっかりと摂るなどの栄養的なアプローチを行うことは稀です。でも、それらを改善することで精神的に落ち着き、成績も向上する可能性があります。
栄養バランスを見直し、1日3食きちんと摂り、間食は食べすぎないということを実行することで、悪くなることは何もありません。精神的にも、体調も、健康状態も良い方向に進むのみです。
覚えておいて、実行して、損はありません!
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