ADHDの改善には神経伝達物質の
原料となる栄養の補給で
2014年11月11日 [ADHDと栄養]

「心」の状態は食事で決まる
私たち人間の脳には1千億個以上という膨大な数の神経細胞が存在しています。それぞれの神経細胞の間には「シナプス」という場所があり、この部分を使って情報伝達を行なっています。
また気持ちを左右するノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質もここで作られています。
これらを作り出すには当然、原料(=食事に含まれる栄養)が必要です。原料(栄養)が不足すれば、作られる神経伝達物質のバランスが狂い、精神面に悪影響が出てしまうのです。
また生まれつき神経伝達物質の量をうまく調整できない人もいます。
どちらの場合でも、原料(栄養)の補給を充分にすることで精神のバランスを保つことが出来る可能性があるのです。
この栄養を補う方法の最大の利点は副作用がないことです。誰にでも出来て、副作用もない。一度トライしてみる価値はある方法なのです!
神経伝達物質はタンパク質から作られる
アミノ酸がもとになっている
神経伝達物質の多くはアミノ酸を原料として作られていますし、なかにはアスパラギン酸などアミノ酸そのものが神経伝達物質であるケースもあります(アミノ酸は食事中のタンパク質を体内で細かく分解することによって作られる栄養素です)。そのため精神面の不調の解決にはタンパク質がとても重要なのです。
日本人はご飯やパン、麺類といった炭水化物が大好きです。炭水化物はブドウ糖に分解されて脳を動かすエネルギー源にはなりますが、タンパク質を食べなければ神経伝達物質が不足し、イライラしたり、そわそわしたり、集中できなかったりということになってしまいます。
もしも精神的に落ち着かない、不安感がある、集中力がないなどと感じている場合は、ご飯やパン、麺類といった炭水化物に偏った食生活が原因となっている可能性があります。心当たりがある方は、タンパク質もしっかり食べる生活へシフトすることを真剣に考えてみてください。
栄養補給による改善には1~3ヶ月間は必要
身体を構成しているひとつひとつの細胞が生まれ変わるには、それ相応の時間がかかります。新陳代謝によって古い細胞から新しい細胞に替わるための期間は、肌は28日、胃は一週間程度、長いと3カ月以上かかるものもあります。そのため最低でも1~3ヶ月は継続しないと自覚できるような改善効果はでないものと考え、じっくり取り組んでください。
またタンパク質からアミノ酸を作るためには酵素の力が必要ですが、その酵素の原料となるものがビタミンやミネラルです。しっかりとタンパク質を摂っても、充分なビタミンやミネラルがないとアミノ酸を作り出すことが出来ません。
ビタミンやミネラルは食事からエネルギーを作り出すためにも欠かせないもので、不足すると疲れやすい、やる気が出ないという症状の原因にもなります。
肉・魚・大豆製品などのタンパク質を充分に、さらにビタミン・ミネラルを含む野菜や果物、海藻なども合わせて摂りましょう。
神経細胞にはDHA・EPAなどの脂質も大切
脳の神経細胞がきちんと働くためには、神経細胞を包んでいる細胞膜が柔らかいことが大切です。脳のエネルギー源であるブドウ糖を細胞内に取り込んだり、細胞内の老廃物を排出したりするのは細胞膜の仕事なのです。細胞膜が柔らかいとスムーズにエネルギー源を取り込み、老廃物を排泄できるため、脳細胞がいきいきと元気に活動することが出来ます。
この細胞膜を柔らかくしてくれる栄養素が、青魚などに多く含まれるDHAやEPAと呼ばれる脂質の一種です。これらが豊富にあると細胞膜が柔らかくなって、神経細胞が活発に動くようになります。
また細胞膜が柔らかいと情報伝達物質の受け渡しもスムーズになるため、記憶力や学習能力が高まります。
特に急速に脳神経が発達する子供にとって、柔軟性の高い神経細胞を作り出すために青魚のDHAやEPAは必要不可欠なものなのです。
血糖値と脳の深い関係
脳はご飯やパンなどの炭水化物や、砂糖などの糖類を分解して作られるブドウ糖をエネルギー源として動いています。
血糖値という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは血液の中にブドウ糖がどのくらい溶け込んでいるか、ということを数値で表したものです。
脳のエネルギー源はほとんどブドウ糖ですから、血液中のブドウ糖が不足すると正常に働かなくなります。お腹が空いている時はすぐにイライラする、と感じたことはありませんか?それは血糖値が下がってしまって脳が悲鳴を上げている状態なのです。
逆にお腹がいっぱいになったとき、とても幸せで満足した感覚になりませんか?これは血糖値が高まり、脳が満足しているサインなのです。血糖値が高くなると脳は良い気分になり、低くなるとエネルギー不足でイライラしたり、眠くなったり、記憶力や理解力が低下したりします。
あれ?血糖値が高いのは悪いことでしょ?低い方が良いのよね?とお思いの方も多いでしょう。食事の後は健康な人でも血糖値は高くなります。
一般的に健康診断などで「血糖値が高いですよ」と言われる場合の血糖値とは空腹時血糖値です。食事で摂ったブドウ糖が、空腹になるほど時間が経ってもエネルギー源として必要としている頭や身体の細胞にうまく取り込まれずに、輸送機関である血液中に余っている状態を空腹時血糖値が高いと言うのです。
血糖値が乱高下する原因は糖の分解スピード
GI値という言葉を聞いたことはありますか?雑誌のダイエット記事などにも度々書かれているのでご存じの方も多いかと思います。炭水化物がブドウ糖に分解されるスピードを表しており、GI値が高い=分解スピードが速い食品です。
高GI値の食品を摂ると、ものすごいスピードで血糖値が上昇します。すると身体は、インシュリンというホルモンを出して血糖値を下げるのですが、あまりにも急上昇するとホルモンを出し過ぎてしまうため、今度は血糖値が下がり過ぎてしまい一気に低血糖となってしまいます。ジェットコースターのように血糖値が急激に上がって急激に下がると、精神面も大きく乱れてしまいます。
高GI値の白米や甘いジュース、お菓子などをたくさん食べている方は要注意です。
この点に気を付けるだけで、様々な症状が和らぐ可能性があります。
腸の状態を高めましょう
せっかく沢山の栄養素を摂ったとしても、腸が健康でなければ十分に吸収出来ず宝の持ち腐れになってしまいます。
健康な腸とは善玉菌がたくさんあって、善玉菌が作り出す酸の働きで腸の中が酸性になっている状態です。そのような状態では悪玉菌が増えにくく、免疫力も高く保っていられるのです。
一般的にADHDのお子さんは腸内の善玉菌が少ないことが分かっていますので、積極的に善玉菌を増やすようにしてください。食物繊維をしっかり摂り、善玉菌のエサとなるオリゴ糖も取り入れるといいですね。それからビフィズス菌などの善玉菌も積極的に摂りましょう。便の色が黒っぽい色から黄色っぽく変わってきたら、それは腸内が酸性になってきた、つまり善玉菌優勢になってきたしるしです。
皆さんが考えている以上に脳や精神の状態と、栄養は深い関係にあります。必要な栄養素はシッカリと摂って、血糖値を乱高下させる高GI値のものを食べ過ぎないように、そして腸内環境を整えるように気を付けてみてください。
1ヶ月から3ヶ月続けてみて何か良い変化を感じたら、その食生活はあなたにとって正解だったというしるしです。ぜひ続けてください。
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