脳と腸の元気のための栄養素とは
2014年11月16日 [ADHDと腸内環境]

腸は想像以上に高機能
腸は体に必要なものは、消化・吸収してとり入れ、不要なものは外に排出する他にも、とても優れた能力を持っています。免疫力のアップ、抗アレルギー作用、快眠、やる気や幸せと感じる感情への影響など様々な働きをしています。
腸の元気を保ち、その能力を十分に発揮させることは、私たちの健康向上に欠かせないことなのです。
やる気・元気がでない、寝つきが悪い、イライラすることが多い・・・という方は腸内環境のバランスが悪化して、幸せ物質のセロトニンが不足しているのかもしれません。
「セロトニン」を増やそう!
セロトニンは神経伝達物質のひとつで、脳内に十分にあると落ち着きや心地よさ、満足感などを感じることができます。しかし不足してしまうと、精神のバランスが崩れてしまい、イライラしやすくなったり、なんだか気持ちがモヤモヤしてしまったり、落ち込みやすくなったり、やる気がなくなったりしてしまいます。
セロトニンは脳で作られるというイメージを持っている人が多いと思いますが、実は95%が腸内で作られているそうです。脳と腸は神経でつながっており、脳にしか存在しないと思われているセロトニンは腸にもあり、腸では身体のリズムづくりや体温調節などの役割をしています。
腸で作られたセロトニンがそのまま脳に運ばれて働くわけではありませんが、脳で作られるセロトニンも完成手前の状態までは腸で作られ、脳で仕上げが行われると考えられています。
そのため精神的な安定を得るためには、腸内環境を良くしてセロトニンをきちんと作り出せる状態にしてあげることが大切です。
腸にしっかり働いてもらうには・・・
私たちの腸には善玉菌、悪玉菌、そして最も数が多く良い働きも悪い働きも出来る日和見菌が存在し、その数は100兆個以上にものぼります。
健康な人の腸内細菌バランスは、ピフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が多く、腐敗菌であるウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌は少ないのが特徴です。
しかし、腸内環境は年齢、食生活の変化、ストレス過多などで悪化します。腸内環境を整えるには善玉菌を増やすことが必要です。
「悪玉菌優勢」の腸内環境になると?」
悪玉菌の勢力が強いと日和見菌が悪玉菌に加勢し、腸内環境が悪化します。腸の働きが鈍くなり、便が滞って便秘をしがちになったり、逆に下痢になったりしてしまうこともあります。また免疫力も低下します。
「善玉菌優勢」の腸内環境になると? 」
善玉菌の代表は乳酸菌やビフィズス菌です。これらの菌は、食事に含まれている糖を分解して乳酸を作ることによって腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌勢力を抑え、病気を予防します。また便秘や下痢といった腸のトラブルの解消もしてくれます。
健康な腸内環境のために必要な栄養素等
●乳酸菌
乳糖やブドウ糖などを分解して乳酸を産生する善玉菌です。主に発酵食品に含まれており、動物性乳酸菌と植物性乳酸菌があります。動物性乳酸菌はヨーグルトやチーズなどの乳製品、植物性乳酸菌は味噌、漬物、醤油、キムチなどの発酵に利用されてきました。
また食品として摂取することによる腸内細菌のバランスの改善やアレルギー症状の軽減作用など、様々な機能性についての研究が報告されています。
●ビフィズス菌
善玉菌の代表選手のビフィズス菌は、大腸菌など悪玉菌の増殖を抑え、大腸の嬬動(ぜんどう)運動を促して腸内環境を整えます。
近年様々な研究で整腸効果以外にも、アレルギー抑制、免疫機能の強化、肌の乾燥予防や病原菌の感染予防作用など様々な働きがあることが確認されています。
●食物繊維
食物繊維は大きくわけて水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があり、それぞれ違った特長があります。
<水溶性食物繊維>
ネバネバ系とサラサラ系があり、主に昆布、わかめ、ごぼう、果物、里いもなどに含まれています。
粘性があり胃腸内をゆっくり移動するので、お腹が空きにくく、食べすぎを防ぎます。また糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。脂肪分解酵素の働きを助ける胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄させる働きもあるので、ダイエットにも役立ちます。
また大腸内で分解されてビフィズス菌など善玉菌のエサとなるため、腸内環境が良くなり整腸効果が期待できます。
<不溶性食物繊維>
野菜などに含まれる水に溶けない「筋」で、穀類、野菜、豆類の他、エビやカニの表皮にも含まれています。胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、便のかさを増やすことによって腸を刺激して蠕動運動を活発にし、便通を促進します。
よく噛んで食べる必要があるので、食べすぎを防いだり、顎の発育を促したり、歯並びをよくする働きがあります。こちらも大腸内で分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境を改善してくれます。
食物繊維が豊富な食材は、噛み応えがあるものが多く、自然とよく噛んで食べるようになります。よく噛むことによって唾液の分泌を促し消化を助け、脳の血流をよくして機能を活性化する働きもあります。
●オリゴ糖
ブドウ糖や果糖などの小さな糖の成分が2~10個結合したものです。胃や小腸で消化酵素によって消化吸収されることなく、大腸に達してエサとなって善玉菌であるビフィズス菌を増やし、悪玉菌といわれる大腸菌・ウェルシュ菌等の増殖を抑えます。
またオリゴ糖は消化吸収されないので、エネルギーになりにくい糖でもあります。
腸の環境が整ったら次はセロトニンを増やす食べ物を!
精神のバランスを整えるセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸の一種を原料として作られています。トリプトファンは、体内では合成できないため食べ物から摂取する必要があります。
トリプトファンは、このような食べ物に多く含まれています。
●肉類(牛レバー、豚ロース、鶏むねなど)
種類や部位によって多少の違いはありますが、可食部100gあたり200~250mgくらいのトリプトファンが含まれています。
●魚介類(すじこ、かつお、マグロ、ぶりなど)
●乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)
●豆類
小腹がすいたときにアーモンドなどのナッツなどを食べるといいでしょう。納豆も お勧めです。また豆乳は牛乳よりもトリプトファンが多めです。
●穀類(米、パスタ、そばなど)
穀物は基本的に炭水化物ですが、意外にもトリプトファンが豊富に含まれています。ちなみに、トリプトファンは炭水化物と一緒に摂ると脳内に届きやすくなります。ただし炭水化物に偏ることなく、ほかの食品と一緒にバランスよく食べましょう。
トリプトファンをサポートするビタミンB6も忘れずに
セロトニンを作るためには、トリプトファンに加えてビタミンB6も必要ですから、しっかり摂りましょう。
ビタミンB6は、このような食べ物に多く含まれています。
●魚類(かつお、まぐろなど)
●肉類((レバー、ささみなど)
●果実 (特にバナナ)
●にんにく
これら以外にも含有量の多さの違いはありますが、様々な食品に含まれているので、バランスの良い食事をこころがけましょう。
脳に必要な栄養素は他にも・・・
●ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12)
神経の機能維持に作用し、睡眠に役立つビタミンで、疲労回復にも関わっています。
それぞれが助け合いながら働くため、どれかひとつでも不足することが無いように摂ることが大切です。
魚類や豚肉、レバーなどに多く含まれています。
●葉酸
葉酸もビタミンB群のひとつで、脳の老化予防、抑うつ、神経機能の維持、動脈硬化や心筋梗塞、
大腸ガンのリスク低減、悪性貧血の予防などに役立ちます。
神経機能に関わっており、気持ちをリラックスさせる働きや、うつ症状の予防や改善にも役立つ
ことが分かっています。
緑黄色野菜やレバー、大豆製品(枝豆、納豆、きな粉など)などに多く含まれています。
一番大切なのは栄養のバランス
腸に必要な栄養素は先に棲みついている善玉菌との相性もあり、どんな食品が善玉菌を増やしてくれるかは、人によって違います。
脳に必要な食品も、これとこれだけを食べていれば大丈夫というものはなく、様々な栄養素が助け合って働いています。
脳や腸はもちろん、心身全体の健康を維持して、より元気に過ごすためには何かひとつの栄養素ばかりを集中して摂ることなく、肉や野菜、野菜や果物、乳製品、豆類、主食などをバランスよく食べましょう。
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